『華やかに入社式』

わたしは、ウィッグを購入し、それをつけたまま
入社式に着るスーツを買いにいった。不思議なことに
、 ちょっと外見が変わっただけで、自分のおどおど感が消えた気がした。
今度は普通に店員さんに声をかけた。入社式に着るスーツを
探していることを伝えると、いくつか選んで持ってきてくれた。
白が2着に薄いピンクのものが1着。今までは、
グレーとベージュしかなかったし、店員さんが選んで
くれるものも、どちらかと言えばおとなしめな、無難なものが多かった。
ちょっぴり不安に思いながらも、白いスーツに腕を通してみた。
フレア調のワンピにジャケットと、スカートもついている。
思ったよりワンピの丈が短い・・・。試着室の中はせまくて、
あまり全体的な雰囲気すらつかめない。
おそるおそる試着室から出てみる。

「わぁ、すてき!」

店員さんが言ってくれた。
わたしの想像とは違い、クラスの明るい人たちの
グループにいるような、そんな雰囲気の自分がいた。
ミニワンピも、全然似合ってる、なんて思ってしまった。
もう、それだけで大満足のわたしは、店員さんが試着だけでも、
と進めてくれたが、この白のワンピスーツを買うことにした。
胸元にオレンジとピンクの小さなブリザードのコサージュも一緒に購入。
髪がちょっと伸びるだけで、こんなにも華やかになれるなんて。
今まで試着しても、明らかにお世辞とわかるほめ言葉を発する
店員さんしかいなかったのに、今日はずっとほめてくれていたような気がした。